情報処理技術者試験の勉強をしていると、必ず出てくる「NoSQL(ノーエスキューエル)」という言葉。
「RDBMS(SQL)ではないデータベース」ということは名前から分かりますが、具体的にどう動いているのか、なぜ必要なのか、イメージしづらいですよね。
「流行りだからとりあえずNoSQLにしておこう」なんて安易に選ぶと、後で痛い目を見るかもしれません。
今回は、インフラに詳しくない文系PMの方に向けて、NoSQLの仕組みを「コインロッカー」に例えて解説します。これを知っておけば、試験の点数だけでなく、現場での技術選定の判断軸も養えますよ!
NoSQLとSQLの決定的な違い

私たちが普段慣れ親しんでいる「SQL(リレーショナルデータベース)」と「NoSQL」は、データの持ち方が根本的に異なります。
SQL = 「Excel」のようなキッチリした表
SQLデータベース(Oracle, MySQLなど)は、Excelの表と同じです。
「氏名」「年齢」「住所」といった列(カラム)を事前に決めて、そこにデータを一行ずつ入れていきます。
- 特徴: ルールに厳しい。列にないデータは入れられない。
- メリット: データが整理整頓されているので、後から複雑な集計がしやすい。
NoSQL = 「コインロッカー」のような自由な箱
一方、NoSQL(特にKey-Value型やドキュメント型)は、コインロッカーです。
「101番」という鍵(Key)さえあれば、その箱(Value)の中に何を入れても自由です。
- Aさんの箱: ノートとペンを入れる。
- Bさんの箱: ノートとペンと、お弁当を入れる。
Excelだと「Bさんだけお弁当の列を追加する」なんてことはできませんが、コインロッカーなら「入るなら何でもOK」です。
この自由さとシンプルさがNoSQLの武器です。
データ形式の違いを見てみよう(JSON)
NoSQLでは、多くの場合JSON(ジェイソン)という形式でデータを保存します。
{
"ユーザーID": "1001",
"名前": "山田 太郎",
"趣味": ["サッカー", "読書"],
"プレミアム会員": true
}
このように、「趣味」が2つあってもいいし、別の人のデータには「趣味」という項目自体がなくてもエラーになりません。
なぜ使い分ける?「銀行」と「SNS」の話
では、Webディレクターとして、この2つをどう使い分ければ良いのでしょうか?
判断基準は「正確さ」と「スピード・量」のどちらを優先するかです。
銀行の振込システム 👉 SQL (RDBMS)
「AさんからBさんに1万円送金する」といった処理では、一瞬でもズレが許されません。
「厳密な整合性」が得意なSQLが必須です。
SNSの「いいね!」機能 👉 NoSQL
ある投稿に1万人が同時に「いいね!」をしたとします。
この時、Aさんのスマホでは「9998いいね」、Bさんのスマホでは「10005いいね」と表示されていても、大きな問題にはなりませんよね? 「数秒後に数が合えばいいから、とにかく止まらずに高速処理したい」という場面では、NoSQLが圧倒的な強さを発揮します。
試験に出る重要キーワード「BASE特性」
応用情報技術者試験などの情報処理技術者試験の問題では、NoSQLの特徴を表す「BASE(ベース)」という言葉がよく出題されます。
これはSQLの「ACID特性(厳密さ)」と対になる概念です。
- BA (Basically Available): 基本的にいつでも使える(一部が壊れても止まらない)
- S (Soft state): 厳密な状態管理をしない(あいまいな状態を許容する)
- E (Eventual Consistency): 結果整合性
SQLのACIDも、情報処理技術者試験では頻出のテーマです。
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「結果整合性」だけは覚えて帰ってください
一番大事なのが「E(結果整合性)」です。
「今はデータがズレているかもしれないけど、最終的に(Eventually)つじつまが合えばOKだよ」という考え方です。
SNSのサーバーは世界中に分散しているので、全てのサーバーで同時に数字を合わせようとすると時間がかかってしまいます。
「とりあえず書き込んで、あとで裏で同期をとる」というNoSQLの”ゆるさ”こそが、爆発的なアクセスを捌ける秘密なのです。
【PM必見】設計思想が真逆!「後からの変更」に注意
最後に、プロジェクトマネジメントの視点で最も重要な「設計の違い」をお伝えします。
ここを間違えると、開発後半で地獄を見ることになります。
SQLの設計 = 「整理整頓」
- 作り方: 「とりあえずデータを重複なくキレイに保存しよう(正規化)」
- 変更: 画面の仕様が変わっても、SQL文(データの取り出し方)を変えれば対応できるので、柔軟性が高い。
NoSQLの設計 = 「福袋作り」
- 作り方: 「どの画面で何を表示するか(クエリ)」を先に決めて、その画面専用のデータセットを保存する。
- 変更: 「やっぱりこの画面で、別の条件で検索したい」と言われると、データの持ち方から作り直しになる。
NoSQLは「読み出しスピード」を最優先するため、データを取り出しやすい形(福袋の状態)で保存してしまいます。
そのため、「仕様変更(検索条件の変更)にはめちゃくちゃ弱い」という弱点があります。
SNSの「ユーザー検索」仕様変更の悲劇

たとえば、あなたがSNSアプリのPMで、エンジニアにこんな追加オーダーを出したとします。
「今はID検索しかないけど、すでに情報を収集している年齢と趣味でユーザー検索できるようにしたいな!」
これに対し、SQLとNoSQLではエンジニアの反応が天と地ほど違います。
SQL (Excel型) の場合
エンジニアは「了解です、30分で終わります」と答えるでしょう。
なぜなら、Excelのような表に「年齢」や「趣味」の列がすでにあるからです。
「年齢が20代、かつ趣味がサッカーの人を抽出」という命令文(クエリ)を1行書けば終わりです。
NoSQL (福袋型) の場合
エンジニアは「えっ…それ、データベース作り直しになりますよ? 1ヶ月ください」と青ざめるかもしれません。
なぜなら、NoSQLは最初に「IDで検索する」と決めた時点で、「IDというラベルを貼った福袋」としてデータを保存してしまっているからです。
- 現状: 福袋の外側には「ID: 1001」としか書いてありません。中身(年齢や趣味)を見るには、袋を開ける必要があります。
- 問題点: 「趣味がサッカーの人」を探すには、世界中の数億個ある福袋を片っ端から全部開けて中身を確認しなければなりません。これでは検索に何分もかかり、実用的ではありません。
- 解決策: スピードを出すためには、「趣味」をラベルにした新しい福袋(検索用データ)を、全ユーザー分もう一度作り直して保存する必要があるのです。
このように、NoSQLは「最初に決めた検索方法」には爆速ですが、「後から思いついた検索方法」に対応するには、データの持ち方そのものを変える大工事が必要になります。
まとめ
- NoSQLとは: コインロッカーのような自由な箱。大量データに強い。
- 使いどころ: 銀行のような厳密さより、SNSのようなスピードと量が求められる場所。
- BASE特性: 「最終的に合えばOK(結果整合性)」という割り切り。
- 注意点: 最初に画面仕様(検索条件)を決めないと設計できない。後からの変更は高コスト。
「流行っているからNoSQL」ではなく、「この機能は結果整合性で許されるか?」「仕様変更の可能性は高いか?」という視点を持つことが、成功するWebディレクターへの第一歩です!

