「はかる」ことから始めるチームのモチベーション設計

「進捗はいかがですか」「だいたい8割くらいです」

このやりとりを何度も繰り返しているうちに、報告する側も聞く側も、だんだん気持ちが乗らなくなっていく。プロジェクトでよく見かける光景ではないでしょうか。

問題は、報告する人の意識の低さではありません。「だいたい8割」という言葉には、進んだ実感も、近づいている手応えも含まれていないことのほうです。

ゲームの面白さをプロジェクト運営に応用する「ゲーミフィケーション」において、最初の一歩は仕掛けを増やすことではなく、はかることにあります。

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このサイトの運営者

山脇 弘成(SSAITS(サイツ)代表)

PMP®有資格者・Webプロジェクトマネージャー
大手メディアや官公庁のWebプロジェクト実績多数。
「技術」だけでなく「対話」を重視し、御社の「ほんとは、こうしたかった」を形にします。

Promapediaは、SSAITS(サイツ)が運営する
プロジェクトマネジメント情報サイトです。

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ポイントが貯まると嬉しくなる理由

私たちの身の回りは、ポイントであふれています。買い物のポイント、航空会社のマイル、アプリの連続ログイン記録。

「あと少しで1,000ポイントだから、もう一品買っておこう」「今日はポイントが5倍だから、あの店に行こう」。そんな衝動に駆られたことのある方は少なくないはずです。

ここで注目したいのは、動機がキャッシュバックだけではないことです。

ポイントの多くは、還元率にすれば数パーセント程度にすぎません。それでも人が集めたくなるのは、「50ポイントが付きました」「次はゴールド会員です」とアナウンスされるうちに、ポイントを貯めること自体が目的化していくからです。

得をするから集めるのではなく、増えていくのが見えるから集めたくなる。この「数値に一喜一憂する心の働き」こそが、ゲームの面白さの出発点です。

はかるだけで、ものごとはゲームになる

はかるだけで、ものごとはゲームになる

数値を競うというのは、最もシンプルなゲームのかたちです。

陸上競技はその典型でしょう。100メートル走も走り幅跳びも、突き詰めれば時間や距離という数値を比べているにすぎません。それでも人は0.1秒を削るために何年も練習を重ね、自己ベストを更新した瞬間の高揚を忘れられなくなります。

時間や距離をはかる。それだけで、ものごとはゲームになり、面白さが生まれます。

なぜでしょうか。はかることで、次の2つが同時に手に入るからです。

  • 現在地 — 自分がいまどこにいるのか
  • — ゴールまであとどれくらいか

ゲームの3要素にあてはめるなら、これはフィードバックシステムそのものです。現在地とゴールの差が見えるからこそ、次の一手を選べる。逆に言えば、測られていない仕事は、進んでいるかどうかを本人すら確かめられない状態にあります。

「だいたい8割」に手応えがないのは、それが現在地でも差でもなく、感覚の表明にとどまっているからです。

プロジェクトでは、何をはかるとよいのか

では、プロジェクトで何をはかればよいのでしょうか。目的別に整理してみます。

【目的別】はかるものリスト
  • 残りの量を実感するために
    バーンダウンチャート(残作業を日ごとにグラフ化したもの)は、この用途にもっとも向いています。線が下がっていく形そのものがゴールへの接近を表すため、説明がなくても状況が伝わります。
  • 進み方のペースを知るために
    1週間あたりのタスク消化数や、消化ポイント(ベロシティ)。数字そのものより、先週と比べてどうかを見ることに意味があります。
  • 滞りを見つけるために
    着手から完了までの日数(リードタイム)や、レビュー待ちの件数。これらが伸びているときは、人の頑張りではなくプロセスの詰まりを疑うサインになります。
  • 品質の変化をつかむために
    指摘件数や、再オープンしたチケットの数。件数の多寡を責める材料にしないことが前提ですが、傾向を追う分には有効です。

すべてを揃える必要はありません。まずは1つだけ選ぶほうが、確実に続きます。

数字は、見えるところに置いてはじめて効く

はかっていても、管理ツールの奥に眠っていては意味がありません。ポイントカードが機能しているのは、残高が常に目に入る場所にあるからです。

  • 定例会議の冒頭で、必ず同じグラフを表示する
  • チャットのチャンネルに、週次で自動投稿する
  • オフィスがあるなら、印刷して壁に貼る

大がかりな仕組みは要りません。同じ数字を、同じ場所で、定期的に見る。それだけで、チームの中に共通の現在地が生まれます。

注意点:はかる対象を間違えると、逆に壊れる

ここは慎重にいきたいところです。測ることには副作用があります。

測りやすいものを測ると、測りやすい行動が増えます。タスクの完了件数だけを追えば、小さいタスクを選ぶ人が現れます。コード行数を追えば、冗長なコードが増えます。指標が目標になった瞬間、その指標は指標として使えなくなる、と言われるとおりです。

避けたい使い方を挙げておきます。

  • 個人間の比較に使う — 担当領域が違えば数字は揃いません。助け合いを止めてしまう副作用のほうが大きくなります
  • 数字を詰める材料にする — 一度そう使われると、以後は都合のよい数字しか上がってこなくなります
  • 測ること自体が仕事になる — 入力に手間がかかる指標は続きません。自動で集まるものから選ぶのが無難です

測る目的は評価ではなく、チームが現在地を共有することです。この一点を外さなければ、大きな失敗にはなりません。

まずは、ひとつだけ

明日から始めるなら、手順はこれだけです。

  1. チームで気になっていることを1つ選ぶ(残作業、レビュー待ち、いずれでも)
  2. それを数えて、グラフか数字にする
  3. 定例の冒頭で毎回見る。数字が動いたら、それを話題にする

数字が下がった週があってもかまいません。下がったことが分かる状態になっているだけで、以前より前進しています。

モチベーションは、気合いで維持するものではなく、見える化の副産物として生まれてくるものです。まず1つ、はかるところから始めてみてください。

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