要求事項文書とは何か?プロジェクトの6種類の要求事項を解説
要求事項文書の概要
要求事項文書とは、個々の要求事項がプロジェクトのビジネス・ニーズをどのように満たすかについて記述した文書のことです[1]PMBOK第6版、736頁。。
PMBOKの手法に従ってプロジェクトを進めている場合は、「要求事項の収集」のプロセスで要求事項文書を作成します。
要求事項をプロジェクトのベースラインとするには、要求事項が測定とテストが可能な明瞭性を有し、追跡可能性があり、完全性や一貫性という条件を満たしながら、主要なステークホルダーに受け入れられる必要があります[2]PMBOK第6版、147頁。。
これらの情報をまとめたものが、要求事項文書です。
この要求事項文書はPMBOKの様々なプロセスにインプットとして用いられ、プロセスの結果によっては適宜更新されていきます。
要求事項文書の分類
要求事項は多くの場合、「予算内に収めたい」「デザインの良いものを作ってほしい」というような、漠然とした要求から始まります。
こうした要求は、プロジェクトの話し合いが進み、情報が集まっていくにつれ、段階的に詳細化されていきます。
詳細化された要求事項は以下のような6種類のグループに分けられます[3]PMBOK第6版、148頁。。
- ビジネス要求事項
- ステークホルダー要求事項
- ソリューション要求事項
- 移管および準備状況への要求事項
- プロジェクト要求事項
- 品質要求事項
ここからは、これらの要求事項の内容を見ていきましょう。
ビジネス要求事項
ビジネス要求事項とは、組織全体のニーズです。
組織として解消したい課題や、プロジェクトが採用された理由は、このビジネス要求事項にあたります。
ステークホルダー要求事項
ステークホルダー要求事項はその名の通り、プロジェクトのステークホルダーや、ステークホルダー・グループからのニーズです。
ソリューション要求事項
ソリューション要求事項はビジネス要求事項やステークホルダー要求事項を満たすプロダクト・サービス・所産の特性や機能、フィーチャーです。
簡単に言いかえれば「プロダクトに何をしてほしいか」「どのような状態であってほしいか」というニーズがソリューション要求事項にあたります。
ソリューション要求事項は以下の2つに分けられます。
- 機能要求事項
- 非機能要求事項
ソフトウェア開発で使われる「機能要件」「非機能要件」という言葉と同じ意味です。
機能要求事項はプロダクトの振る舞いを、非機能要求事項は機能要求事項を補足し、プロダクトを効果的にするために求められる環境条件や品質を表します。
これらの内容については、下記の記事もご参照ください。
移管および準備状況への要求事項
移管および準備状況への要求事項はプロダクトが完成した後の移管作業の際に必要なデータ変換や、スタッフへのトレーニングなどのニーズです。
例えば新しい会計システムを導入したとして、古い会計システムのデータの移行方法や、新しいシステムを使うためのスタッフのトレーニングが移管および準備状況への要求事項です。
プロジェクト要求事項
プロジェクト要求事項はプロジェクト中の処置やプロセス、またはプロジェクトが満たすべき他の条件を表します。
文書や資料の表記方法や、プロジェクトの制約条件などがこれにあたります。
品質要求事項
品質要求事項は、成功裏に完了したプロジェクト成果物や、他の要求事項の達成についての妥当性確認に必要な条件や基準を表します。