プロジェクトマネージャー(PM)という職業柄、私たちはつい「計画(Plan)」を完璧にしたがります。
リスクを洗い出し、WBSを引き、マイルストーンを置く。仕事ではそれが正義ですが、こと「自分のキャリア」となると、その生真面目さが足かせになってしまうことはないでしょうか?
「今の会社にいていいのか」
「ベンチャーに挑戦すべきか、安定した大企業か」
そんな正解のない問いにWBSを引こうとして、動けなくなっているあなたへ。
今回は、凝り固まった思考をほぐす一冊をご紹介します。
相談への回答は、いつも「好きなようにしてください」

今回紹介するのは、経営学者・楠木建先生の著書『好きなようにしてください たった一つの「仕事」の原則』です[1]楠木建『好きなようにしてください たった一つの「仕事」の原則』ダイヤモンド社、2016年。以下『好きなようにしてください』と略記。。
タイトルからして、なんとも投げやりで(笑)、そして潔い一冊です。
本書は、楠木先生が読者からの仕事やキャリアの悩みに答える形式をとっていますが、どんな複雑な悩みに対しても、先生のスタンスは一貫しています。
「どうぞ、好きなようにしてください」
これだけ聞くと突き放されたように感じるかもしれませんが、読み進めると、この言葉が持つ「深い合理性」と「温かさ」に気づかされます。
「カルボナーラが好き」と言えるのは、食べたことがある人だけ

本書の中で、特にPMやエンジニアの皆さんに紹介したいエピソードがあります。
「マーケティングの仕事がしたい」と語る学生に対する、先生の回答です[2]『好きなようにしてください』4~5頁。。
就職経験のない学生にとって、仕事が面白いかどうかは、「そういう気がしている」だけであることがほとんどです。
「どんな仕事がしたいですか?」と聞かれて、学生が「マーケティングがやりたいです」と答えるのは、パスタ料理を一回も食べたことがない人が、「カルボナーラが好き」と言っているようなものです。
(楠木建『好きなようにしてください』より要約)
思わず膝を打ちました。
私たちも要件定義の段階で、「こういう機能がほしい」と言うクライアントに対し、「実際に動くもの(プロトタイプ)を見ないと、本当に欲しいものは分からない」と感じることがありますよね。
キャリアもこれと同じです。
外から見た「職種名」や「企業ブランド」は、あくまでメニュー表の文字。実際にそのお店に入り、注文し、味わってみないことには、それが自分に合う「味」なのかどうかは、永久に分からないのです。
キャリアは「ウォーターフォール」ではなく「アジャイル」で

「隣の芝生は青い」という言葉がある通り、外から眺めている他社の環境や、選ばなかった選択肢は輝いて見えます。
しかし、40代、50代とキャリアを重ねた人たちが口を揃えて言うのは、「働いてみないと、そこにどんな仕事があるかなんて分からなかった」という事実です。
最初から完璧なキャリアプラン(ウォーターフォール型)を描こうとすると、未知の変数に直面したとき、計画倒れして立ち尽くしてしまいます。
一方で、楠木先生が提唱する「好きなようにしてください」というスタンスは、非常にアジャイル的です。
- 直感(好き・面白そう)に従って、まずはスプリントを回してみる。
- フィードバック(経験・感情)を得る。
- 違和感があれば修正(ピボット)し、良ければ継続する。
「食わず嫌い」や「メニュー表の分析」に時間を使うより、まずは一口食べてみる。
その結果、「やっぱりカルボナーラよりペペロンチーノが好きだった」と気づくことこそが、キャリアにおける最大の成果物なのかもしれません。
迷ったら「実験」してみよう
もし今、あなたがキャリアの岐路で「分析麻痺(Analysis Paralysis)」に陥っているなら。
PMBOKやロジックツリーはいったん脇に置いて、楠木先生の言葉を思い出してみてください。
「どうぞ、好きなようにしてください」
これは「適当にやれ」という意味ではなく、「自分の感覚を信じて、実験してみなさい」という、背中を押すエールです。
失敗しても、それは「この道ではなかった」という貴重なデータが得られたということ。
プロジェクトと違って、人生の納期はまだまだ先です。
まずは肩の力を抜いて、自分の「好き」という直感に従って、小さな一歩を踏み出してみませんか?


