応用情報技術者試験の勉強をしていると、「えっ、こんなマニアックな技術まで出るの?」と驚くことはありませんか?
令和7年秋期の試験でも、「液浸冷却(えきしんれいきゃく)」という聞き慣れない冷却方法が出題されました。
一見、ただの暗記項目に見える問題ですが、現在のAIブームを裏側で支える最重要技術の一つと言っても過言ではありません。
今回は、応用情報の過去問を振り返りながら、液浸冷却の仕組み(単相と二相の違い)や、なぜ今この技術が注目されているのかを解説します。
そもそも「液浸冷却」とは?

これまでデータセンターのサーバー冷却といえば、ファンで風を送る「空冷」が一般的でした。
しかし、液浸冷却(Immersion Cooling)はその常識を覆します。
文字通り、「サーバーを液体の中にドボンと丸ごと漬けて冷やす」方法です。
「精密機器を液体に漬けて大丈夫なの?」と思うかもしれませんが、水ではなく電気を通さない特殊なオイル(絶縁液)を使うため、ショートすることはありません。
空気よりも熱を伝えやすい液体を使うことで、従来の空冷よりも圧倒的に効率よく冷やすことができます。
応用情報技術者試験の過去問を見てみよう
実際に、どのような問題が出題されたのか見てみましょう。
令和7年秋期 午前 問57
生成AIの処理などで用いられる,大量に発熱するGPUを搭載したサーバを,空気冷却よりも少ない消費電力で効率良く冷却できる液体冷却の一つに液浸冷却がある。液浸冷却の方法の説明に該当するものの組みはどれか。
[選択肢の要約]
a. 液体を循環させる単相冷却と、気化熱を利用する二相冷却がある。
b. 金属板と熱交換してサーバを冷却する。
c. サーバを筐体ごと液体に漬けて冷却する。
d. 冷媒となる液体として通常は水を使用する。
この問題の正解は、「a と c」の組み合わせでした。
- a(正解): 液浸冷却には2つの方式があります(後述)。
- b(不正解): これは「水冷(液冷プレート方式)」の説明です。ゲーミングPCの水冷クーラーなどをイメージすると近いです。
- c(正解): これが液浸冷却の定義そのものです。
- d(不正解): ここが一番のひっかけポイントです!
【要注意】「水」を使ってはいけない理由
選択肢dに「通常は水を使用する」とありますが、これは誤りです。
もし水道水に基板を直接漬けたら、電気が通ってショートし、一瞬で故障します。液浸冷却では、電気を通さない「フッ素系不活性液体」や「シリコンオイル」などの絶縁性液体を使用します。
「単相冷却」と「二相冷却」の違いをイメージで理解する

選択肢aに出てきた「単相」と「二相」。言葉は難しいですが、身近なものに例えると簡単です。
単相冷却(Single-phase)=「24時間風呂」
液体がずっと液体のまま(単相)で循環する方式です。
- 仕組み: 温まった液体をポンプで汲み出し、外で冷やしてまた戻します。
- 特徴: 液体が沸騰しないので扱いやすく、メンテナンスが比較的容易です。
二相冷却(Two-phase)=「お鍋の沸騰」
液体が気体に変化する(二相)時のパワーを利用する方式です。
- 仕組み: サーバーの熱で液体が沸騰(気化)します。この「液体→気体」になるときに熱を奪う現象(気化熱)を利用するため、猛烈に冷えます。蒸発した気体は、フタの部分で冷やされてまた液体に戻ります(凝縮・結露)。
- 特徴: 冷却能力は最強クラスですが、特殊な密閉容器が必要でコストも高くなります。
なぜIPAはこれを出題したのか?「AIの進化は熱との戦い」
「冷却ファンの話なんて、インフラエンジニア以外に関係あるの?」
そう思うかもしれませんが、この技術は今のITトレンドど真ん中の話題です。その理由は2つあります。
生成AIのGPUが「爆熱」すぎるから
ChatGPTなどの生成AIを動かすには、NVIDIAのH100といった超高性能GPUが必要です。これらのGPUは性能と引き換えに、信じられないほどの熱を発します。
従来の「空冷(ファン)」では、もはや冷やしきれないレベルに達しており、「液体に漬けるしかない」という状況になりつつあるのです。
つまり、AIの進化を止めるボトルネックが「熱」であり、その解決策が「液浸冷却」なのです。
データセンターの消費電力を下げるため(グリーンIT)
データセンターの電気代のうち、約40%は「サーバーを冷やすためのエアコン代」だと言われています。
液浸冷却にすると、サーバーのファンを取り外せる上に、部屋全体を冷やすエアコンも不要になります。これにより、冷却にかかる消費電力を劇的に(90%以上とも)削減できます。
まとめ
今回紹介した液浸冷却をまとめると、以下のようになります。
- 液浸冷却 = 絶縁オイルにドボンと漬ける。
- 単相と二相 = 循環させるか、沸騰させるか。
- 背景 = AIの爆熱対策 & 省エネ。
応用情報の試験勉強は範囲が広くて大変ですが、今回のように「なぜこの技術が必要とされているのか?」という背景を知ると、記憶に定着しやすくなります。

